平城宮跡には涼しい風が吹き渡り、草原には虫たちが競って美しい鳴き声を響かせています。
もうすっかり秋の気配が色濃くなってきましたね。
そんな秋の情景をお届けしたいところですが、今年は珍しい自然現象が起こっているのでそちらを取り上げていきたいと思います。
場所は平城宮跡資料館前の桜の木です。毎年満開の桜を咲かせ、春の到来を告げてくれています。
(今年の開花の様子はこちら)
最初の異変に気付いたのは、9月中旬頃でした。小さな蕾が膨らんでいるように見えたのです。しばらく観察を続けていたのですが、数輪開花した後、次々と蕾が開花していきました。現在、道ゆく人々が思わず足を止め記念写真を撮らずにはいられないほど満開です。
秋のうろこ雲を背に、何だか不思議な情景ですね。
平城宮跡資料館前 (2015年9月30日) |
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では、春に咲く桜が秋にも開花した理由は何でしょうか。もちろん、ご存じの方もおられるかと思いますが、もう少しお付き合いくださいね。
一番のポイントとなるのは、「葉」の状態だそうです。通常なら、今の時期は夏越しした葉が紅葉しており、やがて冬を迎えて落葉します。しかし、今年は資料館前の桜だけは強風か何らかの原因で早くに落葉してしまいました。
葉は、花芽が翌年の春まで休眠するためのホルモンを作り、継続して休眠ホルモンを届ける役割を担っています。ですが、夏に落葉した木は、花芽に休眠ホルモンが供給されなくなり、秋を迎え気温が下がると「冬」だと思います。そして9月中旬頃からの気温上昇を「春」になったと錯覚して一連のサイクルが早送りされた状態で開花してしまったのですね。
秋桜が咲く季節ですが、一風変わった情景をご覧にぜひ平城宮跡にお越しくださいね。