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(107)戸籍と計帳

個人情報管理 昔も今も

  いま、私たちは、生まれるとすぐに戸籍に登録されます。これにより、名前や生年月日、親子関係や本籍地などの情報がわかるようになっています。

  皆さんは、こうした戸籍の制度の起源が、日本では1300年以上前までさかのぼることを知っていましたか? しかも、そんな昔に作られた本物の戸籍が、東大寺の正倉院に残っているのです。

  戸籍の作成によって、初めて国内の人口やその構成が明らかになり、国家が個人を直接に把握できるようになりました。ただ、当時の戸籍は、6年に1度しか作られませんでした。

  一方、戸籍とよく似た計帳と呼ばれる帳簿が、毎年作られました。計帳には住民の名前や性別、年齢、納税者かどうかが記され、情報が毎年更新されるので、年ごとの税収の見込みを計算するのに役立ちました。

  ところで、この計帳に関わる木簡が、平城京の発掘調査で見つかっています。紙に書かれた計帳を巻物に仕立てた際の木製の軸で、小口に現在の桜井市三輪付近にあった「大神里」の和銅8年(715年)の計帳であることが記されています。

  戸籍や計帳を通じて平城京に集まる全国の人々の情報は、古代国家にとって最も重要な情報の一つでした。

 

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平城京跡で出土した計帳軸(上)。小口には「大倭国志癸上郡大神里」(右)、「和銅八年 計帳」(左)と書かれている

(奈良文化財研究所研究員 山本祥隆)

(読売新聞2015年6月14日掲載)

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