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(103)習書の文字

上達目指し繰り返し

 漢字練習が今週末の宿題、という人はいませんか? 古代の役人も皆さんに負けないぐらい、一生懸命漢字の練習をしていました。 以前、「難波津の歌」での手習いをご紹介しました。今回は同じ文字の「繰り返し練習」の紹介です。

 写真の木簡では、ぎっしりと、同じような漢字を繰り返し練習しています。この中で、一番目立つ文字は「大」でしょう。「大」は、全国の出土木簡を調べると、もっとも多く練習された文字だそうです。 第2位は「人」、第3位は「道」。以下はこちらの通り。

 天・月・部・為・有・十・日・国・長・是・之・呂・子・鳥・一・麻・郡

 意外と簡単な字が多いですね。でも「大・人・天」は、払いの左右のバランスをとるのが難しい字なのです。「道」の“しんにょう”も、書きにくいですよね。「首」も、バランスのとりにくい文字です。一方、「月・十・日・国・呂・一・麻・郡」などは、普段の仕事で大変よく使う文字です。

 「どの字も知ってるよ、上手に書けるよ!」という皆さんの声が聞こえてきそうです。でも、パソコンもスマホもない時代のこと。もっときれいに字が書けるように、必死で習字に励んだ様子が木簡から伝わってきます。

 

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同じ文字を繰り返し練習した木簡

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 井上幸)

(読売新聞2015年5月17掲載)

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