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(100)変わった人名

動物たちがいっぱい

 去年生まれた赤ちゃんに最も多くつけられた名前は、男の子が「蓮」、女の子が「陽菜」だそうですが、人の名前は、時代によって流行(はや)り廃りがありますよね。

 奈良時代の人々の名前は、どのようなものが多かったのでしょうか? 平城京・宮跡で発掘された木簡に書かれた名前を集めてみると、男性では「~麻呂(まろ)」、女性では、「~女(め)」が目立ちます。どちらも、それぞれの性別を表現する名で、男らしく、女らしく育つよう、願いが込められたのかもしれません。

 また、現代とは異なって、動物を表す漢字が目立つことに気づきます。牛養(うしかい)、馬甘(うまかい)、犬万呂、猪手(いのて)、龍麻呂、入鹿(いるか)、羊、鳥麻呂、大虫(おおむし)、大魚(おおな)…。

 これらの動物が身近だったのか、誕生した干支(えと)にちなんだのか…。中には、鯛(たい)麻呂や烏賊万呂(いかまろ)といった一風変わった名前もみられます。

 とある烏賊万呂さんを古記録上で追いかけてみると、同一人物と思われるのに、時には伊賀麻呂、伊加万呂と使う漢字が変化していることがわかりました。鯛麻呂さんが太比万呂となることも。

 奈良時代の人々にとって名前は、どのような漢字を使うかよりも、どのような音で呼ぶかが重要だったのでしょうね。

 

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動物名が使われた古代の人名、読めますか?

(奈良文化財研究所研究員 中川あや)

(読売新聞2015年4月19日掲載)

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