景観研究室では、京都市文化財保護課と共に、
平成22年から京都市岡崎地区を対象に文化的景観としての調査をおこなってきました。
そしてこの調査を受けて、 重要文化的景観の京都市域第1号として
「京都岡崎の文化的景観」の申請に向けた取組を進めています。
今年はその一環として、
京都岡崎魅力づくり推進協議会主催の「オカシル連続講座2014」に協力し、
「京都岡崎の文化的景観」に関連する講座を2つ開催しています。
そのうち、1つめの講座を先週末の1月25日に開催しました。
タイトルは 「営みは水の流れに導かれて~京都岡崎の文化的景観1」。
近代以降、水運や水車動力等に広く利用され、
多様な文化と産業を創出した白川と琵琶湖疏水からなる水脈がテーマです。
会場は京都市動物園北東に立地する白河院です。
白河院は大正8年に京都の呉服商、下村忠兵衛の岡崎本邸としてつくられました。
建築は武田五一、庭は七代目小川治兵衛、という錚々たる顔ぶれです。
庭園の池には琵琶湖疏水から引かれた水が用いられており、
「京都岡崎の文化的景観」の重要な構成要素のひとつでもあります。
当日は定員を大きく上回る約90名の方々にお越しいただき、
超満員でご迷惑をおかけしましたが、 空調がいらないくらいの熱気でした。
講師側からみる植冶の庭は、まるで屏風絵を眺めているようで、
贅沢な環境です。
まずは景観研究室研究員の惠谷より、
「京都岡崎の文化的景観と六勝寺跡の近代」と題して 簡単にお話しをさせていただきました。
続いて、元・景観研究室特別研究員である松本将一郎さん(現・福岡県文化財専門技師)から
「琵琶湖疏水沿岸の水利用と産業」と題したご講演をいただきました。
岡崎での地道な調査を重ねる中で得た貴重な資料に、 聞き手の方々はみな釘付けでした。
最後に、近畿大学理工学部社会環境工学科の岡田昌彰教授から
「土木遺産と地域文化~夷川船溜の履歴」と題したご講演をいただきました。
夷川船溜の水泳場としての利用の変遷を軸にお話しいただく中で、
夷川船溜で泳いだことがありますかと参加者の方々にお聞きしたところ、
なんと半数近い方が手を挙げられました。
これには岡田先生も私たちも驚きを隠せませんでした。
講座の後は希望者の方々と琵琶湖疏水沿いを夷川船溜まで散策しました。
岡田先生は、京都市勧業館のヴァラス噴水を熱心にご説明。
景観研究室もこの存在は知らなかったので目からうろこでした。
松本さんは夷川船溜の水車利用の痕跡を丁寧に解説してくれました。
多くの方々に、「京都岡崎の文化的景観」をつくりあげてきた仕組みと、
その結果として目に見えているものとの関係を知っていただくことができたのではないでしょうか。
次回は3/22、今から楽しみです。