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(75)フォトマップって何

こつこつ分割撮影合成

 漢字で書けば写真地図。カタカナよりわかりやすいでしょうか。最近では、写真と撮影位置情報を連動させ、インターネットの地図上で表示したものもフォトマップと呼ぶようです。

 しかし、奈文研が取り組むフォトマップは少し違います。極彩色壁画で有名な高松塚古墳とキトラ古墳では、石室内部をデジタルカメラで細かく分割撮影し、それらをつなぎ合わせて図面と写真を作製しました。こう書くと簡単な作業に見えるかもしれませんが、石室の内部は幅1メートル、高さ1・1メートルほどしかありません。この狭い石室内に大人2人が入り、壁と一定の距離を保ちつつ、少しずつ移動しながら撮影しなければなりません。細心の注意が必要です。

 撮影枚数は高松塚古墳で1000枚以上、キトラ古墳では1200枚を越えました。

 フォトマップの作製は、カメラレンズの歪(ゆが)みをコンピューターで修整しながら写真を合成していきます。こうして仕上がった図面と写真は、誤差が1メートルで±3ミリ以内に収まる精度の高いものになりました。写真図面と呼ぶ方が適切かもしれません。

 石室が取り出され、壁画がはぎ取られた今、石室内の様子を忠実に伝えるのはフォトマップだけといえるでしょう。

 

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高松塚古墳での壁画撮影の様子

(奈良文化財研究所写真室技術職員 栗山雅夫)

(読売新聞2014年10月12日掲載)

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