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(70)奈良時代の遊びとスポーツ

熱中しすぎはいけません

 今年はサッカーの祭典、FIFAワールドカップで盛り上がりましたね。古代にもサッカーに似た蹴鞠(けまり)という競技がありました。神事として奉納される様子をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。革製の鞠を地面に落とさないように蹴りあう競技で、蹴り続けた回数を競います。大化改新で中大兄皇子と中臣鎌足が知り合うきっかけになったエピソードにも登場しますが、平城京の貴族たちにも親しまれたようです。

 平城京で流行したもう一つの球技に打毬(だきゅう)がありました。ポロに似たスポーツで、馬上の競技者が2組に分かれ、杖(つえ)で毬(まり)を打ってゴール(球門)に入れる競技です。727年正月、皇族や貴族の子弟たちが、こぞって平城京近郊の春日野に出かけ、打毬に興じたために、平城宮の警備が手薄になり、その罰として外出禁止の処分が下されました。打毬は、宮廷の若者をそれほどまでに夢中にさせるスポーツだったようです。

 一方、奈良時代の室内の遊びとしては、囲碁と双六(すごろく)がよく知られています。ともに藤原京の時代から流行した遊びです。人々は双六に熱中し、物や家財をかけるバクチへとエスカレートしたため、バクチの禁止令が出されるほどでした。正倉院には華麗な双六盤や碁盤、駒や碁石が残っており、聖武天皇や光明皇后も双六や碁に興じたことが偲(しの)ばれます。

 

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(奈良文化財研究所主任研究員 廣瀬覚)◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2014年9月7日掲載)

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