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(68)隼人の盾

九州に息づく伝統文様?

 皆さんは奈良文化財研究所のシンボルマークをご存じですか? 大極殿や飛鳥美人? はたまた鹿のマーク?

 答えは、赤白黒の3色で描かれた逆S字の下にギザギザ文様のあるマークです。これは平城宮跡出土の「隼人の盾」の文様をデザイン化したものです。出土品の文様と平安時代の史料に書かれた隼人の盾の特徴が一致したため、隼人の盾とわかりました。

 隼人とは、古代の南九州地方に住んだ人びとのこと。律令国家の制度に組み込まれて、隼人司という役所に勤務し、独特の歌舞を演奏したり、竹細工を生産したりしていました。元日や天皇即位の儀式では、犬の吠(ほ)える声をまねて、邪悪なものを追い払う役目を果たしました。

 話は200年ほど遡ります。5~6世紀の福岡県や熊本県地方には、壁画を描いた装飾古墳が数多く造られました。その壁画の文様には、赤白黒の顔料で鮮やかに描かれたS字のような蕨手(わらびて)文や三角形文、そしてギザギザ文様など、隼人の盾と似た文様が数多く見られます。

 それら装飾古墳の場所と隼人が住んだ地域は少し異なり、時代も違いますが、同じ九州のよく似た文様を見ると、時代を越えた不思議な伝統が息づいているように私には見えるのですが・・・。

 

(68)隼人の盾(読売撮影).jpg

 

(68)隼人の盾_奈良文化財研究所ロゴ(大).jpg

(上)平城宮跡資料館で展示されている出土した「隼人の盾」の複製品(奈良市で)
(下)奈良文化財研究所のシンボルマーク

(奈良文化財研究所研究員 川畑純)◇写真・読売新聞社ご提供 (「隼人の盾」)

(読売新聞2014年8月24日掲載)

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