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(36)現代に生きる平城宮

威厳伝える復元工事

 平城宮は現代にも生きています。ただし、その多くは土の中、地下に眠っています。奈文研では発掘調査を行い、地下にさまざまな建物の痕跡が残っていることを明らかにしてきました。

 しかし、地下に残っているのは柱の穴や、柱を立てた礎石など、建物の基礎の部分にすぎません。私たち研究者が「1300年前の建物が見つかった!」と発表しても、なかなか皆さんには建物のイメージがわきません。

 そこで重要になるのが、そうした遺構を確実に保存しながら、どのようにわかりやすく見せるかを考えること、これを遺跡整備といいます。平城宮跡ではさまざまな遺跡整備の方法が開発されてきました。建物の平面規模がわかるように基壇や礎石を表示したもの、建物の半分まで壁を作ったものなど。そして、一番わかりやすい方法が、建物を古代の姿に復元することです。第一次大極殿をはじめ朱雀門、東院庭園などでは、発掘調査の成果をもとに、建物の上部構造の復元研究をおこない、かつての姿を現在に甦(よみがえ)らせました。

 地下に眠る文化財を、目に見えるように地上に表示し、文化財の内容と価値を守り伝えることも、私たちの大切な仕事です。

 

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発掘成果に基づいて復元された第一次大極殿(奈良市の平城宮跡で)

 

(奈良文化財研究所研究員 前川歩)

(読売新聞2013年12月22日掲載)

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