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(24)土器の形と食事法の変化

箸や匙 底部分に影響

 古代の人たちはどのような食器を使っていたのでしょう。

 古代には木製や金属製の食器もありましたが、最も広く使われたのは土器でした。飛鳥・奈良時代の土器をみると、20年ほどのサイクルで形や作り方が微妙に変化しています。こうした変化の特徴を手がかりに、奈文研は遺構などの年代を測るモノサシとして、土器を利用しています。出土土器の特徴から、遺構や一緒に出土した遺物の年代を推定するのです。

 しかし、土器にはもっと大きな変化もありました。

 飛鳥時代前半の土器は、古墳時代の伝統をひく丸底の土器ですが、後半になると平底になり、低い台がつくようになります。こうした変化は、どうやら食事法の変化と関係するようです。

 古墳時代の丸底の土器は手で持ちあげて使うもので、この頃の人たちは器を手に持ち、料理を手でつかんで食べていたと考えられます。

 これに対し、台付きや平底の土器は、器を台の上に置いたままの食事を可能にしました。おそらく、この頃に使われ始めた箸(はし)や匙(さじ)が、食器の形を変化させたのでしょう。

 それは、唐や新羅、百済、高句麗諸国との文化交流がもたらしたライフスタイルの変化の一つであったと考えられます。

 

(24)土器の形と食事法の変化.jpg(24)土器の形と食事法の変化_2.jpg

(上)飛鳥時代前半の丸底土器 (下)飛鳥時代後半の台付き土器

(いずれも橿原市の奈良文化財研究所藤原宮跡資料室で)

(奈良文化財研究所研究員 小田裕樹)◇写真・読売新聞社ご提供

(読売新聞2013年9月29日掲載)

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